誰でも最初はビギナーだった
コミケ初めてマニュアル
 60回を過ぎる今もコミケの参加人数は増加しつづけている。これは、毎回『今回が初めてです』という参加者がかなりたくさんいるって事で、そういう人たちにとってはカタログだけを頼りにこの巨大イベントに飛び込むのはちょっと不安があるというのが正直なところかも。そこで、コミケ参加の基礎の基礎を改めてお教えしましょう!
 『いまさら聞くに聞けない…』っていうベテラン(?)さんもこっそりどうぞ。
 
 

 

 
(その1)とにかくコミケに行ってみたいんだけど…

1 まずは『カタログ』を読む
▼初参加の段取り十ヶ条
壱 カタログを購入
弐 諸注意、参加の決まりを読む
参 サークルチェックをする
四 交通プランを立てる
五 (一緒に行く人を探す)
六 持ち物を用意する
七 前日はきちんと寝る
八 出発は余裕を持って
九 撤収はお早めに
十 会場を出たらまっすぐ帰宅!
 コミケ規模のイベントになると、前もっていろいろ予習しておく必要がある。まずは参加するイベントの全容を把握しなければ始まらないので、【カタログ】と呼ばれるコミケのパンフレットを手に入れよう。どこで売っているかは、この記事の最後に書いてあるコミケ主催者【コミケット準備会】のホームページで調べる事ができる。近所にアニメショップなどがあれば入荷するか問い合わせてみよう。
 カタログというのは電話帳のようなボリュームの冊子で、コミケに参加するサークルのPR(これを【サークルカット】という)を中心として、コミケに参加するための基礎的な情報がすべて掲載されている。
 この冒頭部数ページの諸注意だけは何度も熟読しよう。まずここに書かれている決まりが理解できない人には参加資格ナシ!
 次に、コミケの雰囲気を把握するために、巻末のほうにある【マンガレポート】を読んでみよう。これはコミケの参加者たちが毎回のコミケの出来事などをまとめたもので、まさに生の感想。何十回と参加しているベテランでも楽しみにしているコミケならではのものだ。
 但し、一度読み始めると楽しくてついつい止まらず、気がついたら夜が明けていたなんてことが(本当に!)あるのでご用心。
 これを読むとコミケの巨大さが良くわかってくるし、気をつけるべき事ややってはいけない事などがわかってくる。古典の授業じゃないけど『何事にも先達はあらま欲しきことなれ(どんなことでも先に行った人の話は聞いておきたいものだなあ)』というわけだ。
 あとは、索引やジャンル分け、サークルカットからお目当てのサークルや良さそうなサークルを探そう。ちなみにこの作業は【サークルチェック】とよばれるぞ。

2 誰かいっしょに行こうよ!
 コミケでなくても、初めて行く場所なら経験者と一緒に行ったほうが何かと心強いに決まってるし、ビギナー同士だって一人で行くよりは何人かで行ったほうがいい。
 特に都心部より遠くから来る場合や、開場まで並ぶつもりで早く来ることを考えているならなおさら同行者が欲しい。
 身近で見つかればそれに越したことはないけど、どうしてもみつからない時はたとえばC−ACCESS Webの掲示板などで近所の人を探してみるのも手だ(最終的にその相手を同行者として頼るかどうかは見つけたあなたしだい。まれに心無い人もいるので慎重に)。
 但し、次ページのコラムにもある通り、【初参加でもあなたはお客様ではない】。自分で調べられることはきちんと調べ、用意するべきものは用意して、決して【連れて行ってもらおうと考えてはいけない】。基本的には一人でも行動できるだけの準備はしておいて当然なのだということを忘れずに。
 入場待ちの行列などでは、お互い参加者同士、情報交換やトイレ、買い物など周囲の人達とうまく協力しあえばずいぶん快適に過ごせるし、そういった場から交流が生まれるのはコミケの醍醐味と言っていい。
 但し、待ち時間に少しでも寝ておこうという人やサークルチェックに忙しい人などももちろん大勢いるので相手の都合をまず考えよう。

3 『お祭り騒ぎ』はNG
 コミケが近づくとどんどん気分は盛り上がってくる。当日は朝から(人によっては2,3日前から)もうお祭り&遠足モードでハイテンション!! …という気持ちはわかるし、会場に近づくほどに『お仲間』が目立つようになってゆくという光景もコミケならでは。だからといって浮かれすぎは禁物。
 たとえば、【電車やバス、レストランなどの中で大声でしゃべったり笑ったり歌ったり】【コスプレしたまま会場に行く】【遅刻しそうだからといって行列や係員の支持を無視】【会場近辺での徹夜】…普段でもマナー(常識)外れの行動だけどコミケのような場所では一層悪い印象を与える。趣味の集まりだからこそ、一般の人に対しても、同じ趣味の人に対しても良い印象を与えるように行動したい。
 一人から数人の非常識な行動が40万人のコミケ参加者全員の印象を悪くしてしまうことだってある。
 どんなにテンションを上げても、常識と良識、冷静な判断力は無くさずに!

4 慣れないうちは余裕を持って
 さて、コミケ会場に入ると、視界の限り【サークルスペース】が並び、立ち止まっていることも難しいくらいの人が行き交い、あちこちに長蛇の列があり…ト、ちょっと途方に暮れてしまうような光景が広がっている。
 事前に一生懸命サークルチェックをしてきていても、そんな混雑の中ではどうしてもまわりきれない場所は出てくる(下手な列に並ぼうものなら2,3時間かかることも珍しくないのだ!)。
 そんなときはきっぱりあきらめよう。
 また、行きに負けず劣らず帰りも大変な混雑となるので、まだもう少し回りたいな、というくらいの時間(具体的には午後3時前くらい)には帰ることを考えよう。
 初めての場所、多くの人、混んだ会場や交通機関などはビギナーの心身を激しく疲労させる。会場にいるうちは気が張っているので気づきにくいが、帰宅したとたんどっと疲れが出て倒れてしまうなんてケースも珍しくない。
 特に2日に渡って参加しようと考えている場合は、とにかく早めに帰ろう。
 閉会まで粘っていると、バスに乗るのにさらに1時間以上並ぶような羽目に陥るぞ。

▼顰蹙 コミケの大事なキーワード
【顰蹙】ひんしゅく:顔をしかめたり、眉をひそめるなど、表情で不快の意をあらわすこと。転じて、他者にそういった不快な印象を与えたり、迷惑をかける行為。(用例:顰蹙をかう=言動などによって周囲の人々を不愉快な気分にさせること)

 お祭りだからこそ、あなたもみんなも楽しく過ごしたい。そのためには、お互いが少しずつ気をつけることが必要だ。カタログにも書いてあるが、コミケに行くことを決めた時から、あなたはコミケというイベントを無事に開催し、終了させる、という責任の一端を負う。
 コミケは同人誌やコスプレなどが好きでたまらない人たちがみんなでつくっている場所で、本屋ではない。だからたとえ同人誌を買うためだけ、コスプレをするためだけに行くとしても、あなたは『お客様』ではないし、コミケのスタッフや本を売っているサークルの人たちも『店員』ではない。みんなそれぞれの方法でコミケを楽しもう、盛り上げようとしてがんばっている同じ『参加者』で、全員が今回のコミケを良いものにする、無事成功させる、という義務と責任を等しく持っている、ということをまずよ〜〜〜〜〜く認識しておこう。
 ただ同人誌を買いたい、コスプレをしたいだけなら、今はネットでもショップでも買えるし、さまざまなイベントもある。はっきりいって大変な思いをしてまでコミケにいくメリットは薄い。ここまで読んで、『いろいろメンドウだなぁ』とか『うっとおしいなぁ』と感じた人にはあまりコミケ参加はオススメできない。多分、参加してもストレスを感じるだけに終わってしまうだろう。
 なぜ、自分はコミケに行くのか、まず考えてみよう。繰り返すが、『コミケに参加するから参加者の義務や責任が課せられる』のではない。『義務や責任をすすんで果たそうという人だけが、コミケの参加者となれる』のだ。

 コミケが特別なイベントなのは、主催者から一参加者まで全員がこの意識を持っているからなのだ。
 もちろん不心得者もいる。コミケの決まりのほとんどは、そんな一部の連中のために作られたものだから、良い参加者になろうという人が増えれば増えるほど、無用な規制は減り、コミケはもっと楽しいお祭りになる。
 コミケを楽しいものにするのも、つまらなくしてしまうのも、あなたの気持ちひとつなのだ。
 
 

 

 
(その2) サークル参加ってどうやるの?

1 何のためのサークル参加?
 コミケにサークルとして参加する(一般参加に対して【サークル参加】という)ことは、あなたにとってどんな意味を持つのだろう?
 現在コミケは東京ビッグサイトという巨大な建物をすべて使って1サークルにつき会議テーブル半分の【サークルスペース】、または単に【スペース】と呼ばれる空間を用意しているが、それでも参加を希望するサークルの半分しか受け入れることができない。
 その反面、せっかくのスペースを単なる荷物置き場に使うなどのケースも目立ち、何度も問題になっている。あくまで最初に同人誌などの作品があって、それを同じ作品や表現手段(これを【ジャンル】といい、サークルを分類する方法として使われる)を愛好する人たちにとって、見て欲しいという気持ちが第一、【スペースが欲しいから本を作るのでは本末転倒】、【並ばずに早く入場したいなどという理由は論外も論外】だということは肝に銘じておいて欲しい。
 一般参加は常識的なマナーやルールを守れるなら誰にでも許されるが、サークル参加はより積極的なコミケ参加方法だ。その分決まりごとは増え、要求される手続きや心配りも高度なものになる上に、それらができて当然とみなされている。
 ただなんとなく出てみたい、で安易に申し込むのはいたずらに抽選倍率を上げ、本当に参加したいひとに対しての迷惑にしかならないので慎んでほしい。
 余談だが、時々「コミケに出て大儲けしよう」と考える人がいる。しかし、現実には参加サークル数万のほとんどは【赤字ではない】か【はっきり言って赤字】というレベルなのだ。儲けたいだけなら手間対効果という面からも同人誌ショップへ委託したほうがいい。良い作品なら、それでも十分な売り上げとなるハズだ。

2 参加までの長い道
 参加への第一歩は【申込書】をコミケ期間中に各会場ホールの出入り口付近にある準備会の受付で購入するところからはじまる。この正式名称を【コミックマーケット●●(次回開催回数)参加申込書セット】といい、冊子1冊に封筒1枚と参加費振込み用の振替用紙がはさんであるものだ。封筒や振替用紙は専用品なので購入したらすぐに揃っているか確認、それ以降は紛失しないように注意しよう。
 コミケから帰ったら、まずその冊子の隅々まで何回も熟読。特に申込期間はまず最初に確認しておこう(冬コミの申し込みは夏コミ前日設営日まで含めてもわずか8日間しかない!)。
 読んで内容が理解できたら、申込書を作成する。これは【配置データ】と【短冊】という2種類の書類と封筒裏の必要項目全てを正確に記入する作業だ。記入ミスは【書類不備】で抽選以前にアウトなので慎重に! 書き上げたら誰かにチェックしてもらうと確実だし、コピーをとっておけば次回は多少楽になる。
 それから郵便局で参加費の振込みを行い、その振込み証明書を貼り付けて申込書、封筒の記入漏れがないか再度確認したらやっと投函だが、1日でも期間をオーバーするとこれまたアウトなので消印の日付は要確認だ。ちなみに速達でも当選率は変わらないぞ。

3 当たった落ちたで大さわぎ
 コミケの概ね1ヶ月〜2ヶ月前になるとようやく当落の通知が届く。たとえ記入不備や申し込み期日違反がなくても、初申し込みで当選する確率は高くない。冒頭でも書いたが、コミケ開場の絶対量は決まっているのに参加希望者は増加の一途。人気ジャンルでは競争率が10倍近くに上ることもあり、毎回申し込んでも【当選までに数年かかることも珍しくない】のだ。あなたがどうしてもそのジャンルでコミケに出たいのか、根性試しか我慢比べをしているとでも思うしかない。
 そのための救済措置として毎回の受け付け番号によるデータ管理が行われているが、この受け付け番号をきちんと記入しなかったり、サークル名やジャンルを毎回変えていると措置から漏れてしまうので注意しよう。ちなみに落選の場合、参加費だけは返金される。
 こうして狭き門を抜けてはじめてあなたはスペースを確保できるのだ。

4 サークルの責任
▼サークル参加までの十段階
壱 同人誌などを作る
弐 参加申込書を購入
参 諸注意、参加の決まりを理解する
四 申込書を書き、参加費を振り込む
五 短冊を作成する
六 申込書を発送する
七 受付確認ハガキの内容を理解する
八 当選したら、参加に必要な準備を整える
九 サークル入場時間中に会場に入る
十 金銭管理はしっかりと行う
 コミケの中核としてサークル参加者に課せられる責任は数多いが、最大の責任は、【あなたの代わりに落選したひと】に対するものだ。
 スペースの当落は基本的には無作為な抽選の結果で、あなたの影にはそのジャンルの熱心なファンながら涙を飲んだひとが何人もいるのだ。その人たちがあなたのスペースが荷物置き場になっていたり、ペーパーだけしか置かれていないのを見たら、どれだけがっかりするだろう。
 とにかく、サークル参加は一般参加者に比べ全ての面で自覚的な行動を要求される。それはコミケに良い作品を求めてやってくる全ての、あなたの選んだジャンルのファンに対する当然の義務なのだ。
 
 

 

 
(その3) コスプレ…してみたいなぁ

1 コスプレという参加方法
 かつてコスプレはコミケの『お祭り』としての雰囲気演出としておまけ的に行われていたものだが、今日ではコスプレだけを目的とした参加者も急増中。準備会としては【コスプレも同人誌と同じ表現のひとつ】とはしているものの、サークル用スペースですら不足している現状では、コスプレ広場を用意するのが精一杯。そんな状況なので、コスプレ参加者は全参加者の中で最も自己責任の徹底を要求されることは理解しよう。

2 コミケでコスプレをするためには
 現在、コスプレに事前登録はない。サークル・一般参加者を問わず当日西地区にある更衣室で着替え、登録とコスチュームのチェックを受けた上でコスプレイヤー用通行証【チェンジ】を受け取るシステムだ。これはコミケで定められているルール【更衣室以外での着替え厳禁】【コスプレしたままの来場、帰宅厳禁】と、主に混雑に対する規制(長い小道具類やとがったパーツの禁止など)および一般性への配慮(肌の露出に対する規制など)によるものだ。
 コミケでは、それらコミケならではの規制に対応したコスチュームを用意しなければならない。その時々の状況に応じて変わってくるので一概には言えない(たとえば雨が降れば場所は一層狭くなる分、規制は厳しくなる)が、せっかく作っても着られないと悲劇なので、グレーゾーンに踏み込まないように工夫しよう。
 そのほかスカートの下にスパッツをはくなどの盗撮防止策や、着替えを短時間で終える工夫、荷物を小さくまとめる工夫など、できることはすべてやっておこう。
 更衣室で延々と仕上げをしている人も多いが、更衣室待ちで常に行列ができる現状ではNG。【完成しなかったらきっぱりあきらめるのも、コミケのコスプレマナー】だ。

3 なぜコスプレ規制はあいまいなのか
 カタログの諸注意内に禁止事項が掲載されて入るがいまひとつ具体性を欠くので、コスプレイヤーとしては明確なガイドラインを決めて欲しいところかもしれないが、準備会がそれをしないのにはワケがある。
 それは、『コスプレも表現手段』という見解に集約される。単純に線引きをすれば規制する側は楽だが、それに反するという理由でそもそも製作できないキャラクターも出てくる。それを避けるために、あえて『工夫次第』というあいまいな基準で現場の状況を見ながら認可している。
 だから不可になってもスタッフに食ってかかったりするのはお門違いなのだ。

4 なぜコミケでコスプレか、それが問題だ
▼コスプレの十大ルール
壱 コスプレ参加でもカタログは読む
弐 コスプレしたままで来ない
参 更衣室以外での着替えは絶対厳禁!
  更衣室は荷物置き場ではない
五 『チェンジ』は熟読すべし
六 いかなる時でも盗撮カメラに注意
七 コスプレ広場では譲り合いで
八 怪しい取材は断る勇気を持つ
九 しつこい撮影もきっぱり断る
十 コスプレするからにはこだわりを持つ
 ハッキリいって現在のコミケはコスプレには不向きだ。更衣室も人数に対して手狭で長蛇の列だし、荷物の置き場所も十分とはいえない。【コスプレ広場】は屋外で、夏は直射日光、冬は寒風がもれなく付いてくる上に、大勢のコスプレイヤーとカメラマン、さらに見物の参加者が入り乱れて大混雑。
 相変わらず投稿写真誌はコミケ直後に下着や肌の露出を狙い撮りした写真を特集掲載するし、興味本位の取材も多い。
 純粋にコスプレを楽しむなら、無理に参加しなくても他のチャンスもいろいろある。
 それでもなお、『コミケでコスプレ』にこだわるのならば、コスチュームの完成度はもちろん、コミケそのものに対してもこだわりがなくてはならない。
 コミケはコスプレをするためのイベントではないが、『好き』を表現するイベントである。あなたがそのキャラクターが好きでコスプレしているなら、堂々と参加しよう。
 
 

 

 
まとめ 〜現在もコミケに初めて参加するということ〜

 これまでの文章の中で、実に何回も『責任』という言葉が出てきたが、これが何よりも現在のコミケの実情を物語っている。
 現在のコミケはサイズ的にはほぼ限界的なところへ到達してしまっているので、今後はより密度の高いイベントになっていくしかない。そんな状況の中へこれから入っていこうというからには、どうしてもすでに中にいる人たちよりも『自覚』や『責任』というものをしっかり持っていかなければならない。
 知っておいてほしいが、コミケは常に必要最低限の制限しか参加者に要求していない。『怒られないから何をやってもいい』のではない、【怒られないからこそ、一層自分達で気をつける】べきなのだ。
 なぜなら『怒られる』ときはコミケそのものがなくなってしまうときなのだから。
 あまりの規模に何がどうなっているのか、なかなか把握しにくいコミケだが、常に想像力を働かせよう。周囲の参加者、スタッフ、施設職員、ガードマンや警察官…それぞれどんな気持ちで自分の行動を見ているのかを考えてみることができるようになれば、あなたはよい参加者になっている。

 さあ、コミケに行こう!!
 
 

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